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元号も令和となり、今の日本の景気について書いてみたいと思います。
まず、私は特定の政党を支持したり、政府の批判をするためにコラムを書いているわけではありません。数字を自分で調べることの大切さ、今の日本経済の現状が伝わればと思ってこのコラムを書いています。
それは私自身が強い危機感を持っているためです。
まだ経済を学びだして日が短いこともあり、不勉強な点も多々あります。間違っている解釈もあるかもしれません。それでも書かずにはおられなかったというのが正直なところです。
2019年の大きなニュースの一つに統計偽装問題がありました。
これが経済を本格的に勉強しようと考えたきっかけです。
この問題は、実質賃金の統計について規定どおりの調査がされておらず、最初は大幅なプラスと発表したものの、今の段階で2018年の実質賃金は0.4%のマイナス(出典 日本経済新聞)となりました。大きなニュースになったので覚えておられる方も多かったと思います。
私はこの問題が起きる前は新聞を毎日読んだり政治経済についてあまり深堀りをするということをしてきませんでした。
ただ好景気、好景気という報道の中、好景気と矛盾する現象やニュースが多く見られることに違和感を感じていました。いずれもデフレ(需要不足)時に起きる現象だったからです。
このような現象が起きていますがGDPは少しずつ伸びていますし、日銀短観も好況という報道。日経平均株価も民主党政権時よりも3倍、失業率も最低など新聞を飾る数字は好況と言わざるを得ないのです。
そこで統計問題で当時話題になりかけていた「アベノミクスによろしく」という弁護士の明石順平先生が書いた書籍を手に取りました。
この本はアベノミクスを統計の面から検証したもので、この本を読んで「統計は自分で調べないといけない」と強く感じるようになりました。ただ著者の主張自体(アベノミクスのコンセプト自体を否定したり、財政破綻論を展開するなど)には的外れと感じた点も多いです。
ただ、統計をとにかく自分で調べてみようという動機づけにはなりました。
この時に私は「景気の影響をモロに受ける」「抽出、平均など余計な要素が絡まない」「全数調査でシンプル」「国内限定の統計で海外の影響を受けない」ということで統計を選び出せば本当の景気がわかるのではないかと考えました。
これが余計な装飾を取っ払った剥き出しの国内経済の実態だと思っています。
(1)不動産登記の申請件数
ここ数年の国内不動産市場は絶好調だったと言われます。好況ならば不動産は活発に動き、賃金も増えるのでマイホームも積極的に購入。不況ならば停滞し、マイホームを諦める。これは景気の指標としてはもってこいです。
では、実際に不動産がどれだけ動いたかを示す統計を見てみましょう。今の「いざなみ超え」と言われる今の好景気は2012年から始まったとされています(アベノミクス景気)。
2012年(平成24年) 1288万6040件
2018年(平成30年) 1258万4518件 ※2.3%の減少(出典 e-Stat 政府統計の総合窓口)
なんとまさかの減少をしています。
参考までに「大不況」と言われた1997年(バブル崩壊で傷んでいた状態で消費税を5%に引き上げ、就職氷河期世代が大量発生した年)の数字も見てみましょう。
1997年(平成9年) 2024万633件 ※2018年はここから38%減少したことになる
大不況と叫ばれる中で今の1.57倍もの不動産が活発に動いていたのですね。
(2)タクシーの利用客数
一年間にタクシーを何人が利用したか(延べ人数)の統計があります。
これも好況不況に大変影響されやすい数字と言えます。どんなに大金持ちでもタクシーに乗れる回数には物理的に限界があります。また、景気が悪いとすれば割高なタクシーは真っ先に敬遠されるため、庶民の景気を見る良い指標になります。
アベノミクス景気で会社の財布に余裕があり、好景気で忙しいわけですから経費でタクシーもたくさん利用しますし、付き合いで夜遅くまで飲み歩くことも増えるでしょう。何より今は飲酒運転の厳罰化が徹底されていますので飲酒運転をする人も減り、その分タクシーを利用する人だって増えてるはずです。
残念ながら統計が2017年までしかないので2012年から5年間の増減率を示しています。
2012年(平成24年) 163万9553人
2017年(平成29年) 147万5000人 ※10%の減少(出典 国土交通省)
2017年の数字は速報値のため、切りが良い数字になっていますが、この数字も落ち込んでいます。不動産と違って投資目的でタクシーに乗る人はいないため、不動産登記よりもさらに景気を正しく表していると考えることができます。
ちなみにこの統計は国民が感じている景気の実感にかなり近く、「アベノミクス第二の矢、財政政策」も伴っていた2013年(平成25年)は利用者数が増加に転じています。しかしながらその後2014年(平成26年)の消費増税でガクンと下がってしまいました。
大不況と言われた1997年(平成9年)の数字は次のとおりです。
1997年(平成9年) 261万4960人 ※2017年はここから44%減少したことになる
もはや現在は壊滅的な数字と言って良いでしょう。
この数字を見てどう感じたでしょうか。
この2つの数字だけでは決めつけられないという人もいるでしょうか。
他には国内のトヨタの新車販売台数が1990年に比べて4割減という報道もありました。新車販売台数の総数は軽自動車に大量に移行したせいでそこまでは減っていませんが、トヨタに限定するとあのトヨタですら4割も減っているのです。
今の国内消費が伸びない理由に人口減少がよく挙げられますが、この2つの統計を見ただけでも人口減少どころではないペースで経済縮小が起きていることがわかります。凄まじい勢いで経済縮小が起きているので若者が経済的な不安から結婚・出産を敬遠するようになり、その影響で人口が減少してきていると言ったほうが説明しやすいのではないでしょうか。
これに対してよく「日本より貧しい国でも出生率は高いではないか。お金は関係ないんだ。」という意見がよく見られます。私も今のようにある程度経済に興味を持つ前はよく理由がよくわかりませんでした。
しかし最近、次のグラフを見て、理由がようやくわかりました。
これはここ20年間の各国の成長率(名目GDP)をグラフにしたもので、ご覧のとおり日本は世界で唯一のマイナス成長国です。
私はこう考えました。例え日本より貧しく、現状が厳しい国であっても経済成長さえしていれば今日より明日、明日より明後日と豊かになっていく実感があるため、未来に希望が持てます。今より豊かになれるというイメージさえ持てれば子供を産み育てたいと思えるのは自然な行動です。
反対に今がある程度豊かだったとしても今日より明日、明日より明後日がだんだんと貧しくなっていき、いつか自分の生活が立ち行かなくなるのではないか不安だとするとどうでしょうか。未来に希望が持てず、本能的に防衛行動に走ってしまうが自然ではないでしょうか。
「日本人は豊かなのになぜ幸福度が低いのか」
「日本人はなぜ悲観的な人が多いのか」
よく語られるこの問いに対する答えも同じであると思っています。
中には「今は人手不足というではないか。人が足りないくらい好況なのだ。」という人もいるかもしれません。しかし「人手不足」は不況であっても、仕事を無理に安く請負う状況になると発生するはずです。安く請けすぎてしまって人件費が払えずに倒産、もしくは安い賃金で募集しても人が来なくて倒産していると考えることはできないでしょうか。
平成不況の中、最低賃金は逆に上がり続け、社会保険の強制加入の範囲は広がりました。経営者の負担は増しています。さらにここから最低賃金上げ、厚生年金加入の適用の範囲を拡大する動きがあります。経営側の負担は増え続けていくでしょう。
また、この間先程のグラフのとおり日本は世界に比べて低成長だったため、相対的に国力が低下。そのため原材料が高騰し、価格転嫁できないということも発生しました。為替がそこまで円安に動いていないので気づいていない人が多いのですが、日本の経済的地位はこの10年でかなり低下しました。為替は為替、投資商品であって、必ずしも国力を表しているとは言えないのです。
価格転嫁に失敗した例としてはヤマト運輸の例が一番わかりやすいでしょう。やはり今はデフレ気味(需要不足)なのです。
ところがメディアはデフレ倒産を「人手不足」という単語を好んで使用することで上手くオブラートに包んでしまいます(似たようなまやかしの単語に「後継者不足」「労働生産性を高めれば日本は成長する」「借り入れの資金需要がない」「日本は雇用の流動化が足りない」「規制緩和が足りない」などがあります。)
経済を少し深堀りして勉強していくとニュースとニュースに矛盾があることに気づきます(好景気と言いつつ共働き世帯が増加していたり、副業が解禁されたり、実質賃金も上がらない等)。
そこで「マスメディアは国内が内的要因で不況とは報道できない。不況と報道できるのはリーマンショックや震災のような事が起きた時だけという不文律がある」と気づくのですが、普通の人はなかなか気づきません。
こういう状況だと、国民の中には「自分の収入が増えないのは自分の努力不足だからだ」と自分自身を責めてしまう人がたくさんいると思うのです。本当は国民のほとんどが苦しいのですが、「日本は好況だ」と報道されると自分だけ世間から取り残されたように誤解をしてしまう人も多くいるのではないでしょうか。これは孤立感から事件、事故、自殺などを引き起こす要因になりかねません。
私は今の政府を批判するつもりは無いと書きました。経済の舵取りというものは非常に難しいと思いますし、世界で保護主義が台頭した現在はなお一層どのような政策を選択するかは難しいだろうと思うからです。安倍政権になってからは消費税を3%も上げた割に頑張っているという見方さえもできると思います(消費税を上げずに当初どおり公共投資を実行していたら完全にデフレを脱却していたと思われる)。
しかしながらありのままの現実が国民に伝わらないと国民も誤った判断をしかねません。不必要に自分を責めてしまう人が出てきますし、取るべき対策を取らない人も出てきてしまうでしょう。今を直視することは大切なことではないでしょうか。
今、経済的に苦境に立たされている方はきっと多いと思います。みんな苦しいのです。自分だけが苦しいのではなく、みんな同じように耐えているのですと伝えたいです。
ここまでで絶望的な気持ちになった方もいるかもしれません。
それでも希望はあります。
偽装統計問題や消費税が10%に増税されることをきっかけに政治や経済に興味を持つ人が増えてきているのは事実です。まだ新聞やテレビなどではそこまで大きく報道されませんが、世界から始まった「不況時は反緊縮財政(不況の時こそ財政出動をする)をすべきだ」という動きが日本でも広がりつつあります。
粘り強く反緊縮を説いている人たちが10年くらいかけて少しずつ支持を集め、その結果、メディアが書いた経済記事への読者コメントを見ても反緊縮財政支持の立場の人たちの意見が多く見られるようになりました。特にこの半年弱で急激に広がってきており、一定水準を突破すると爆発的に支持が増え、政策に影響を与えだす可能性が高いと考えています。与党自由民主党の中にも反緊縮支持の議員はおり、積極的に発信をしています。元々自由民主党は反緊縮財政でやっていた時期もあり、決して異端な考えではありません。
これは一重にYouTubeなどで普通の人が一流の経済学者から直接学びやすくなったことや、SNSの拡散効果、マスメディアへの不信、国民の生活が非常に苦しいものになってきていて、若い人中心に政治への関心が高まっているということの合わせ技で起きていることだと思います。
今現在の政府では具体的に反緊縮に向けた動きはあまりありませんが、その舵が切られるのはそう遠くないと私は思っています。
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